使用者の注意義務違反と過労死の相当因果関係
考察)基本的に下記の内容を考えると相当因果関係の証明をされるとそれを跳ね返すのは難しく、まずは言われないように対策をとることが重要である。概要)平均月250時間程度の時間外労働に従事過重な勤務状態を認識しており、業務遂行に伴う疲労が過度に蓄積する状況になることを容易に想定することができた。負担軽減措置を一切講じなかった体調不良を訴えていたのにほぼ通常と同様の業務に従事させていた注意義務違反に当たる。相当因果関係は通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる業務以外の個体因子などが関与する可能性が考えられるとしても、その因子が何らかの疾患や極めて稀な得意体質にあたるようなものとは認められないときは、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されている相当因果関係を否定することはできない。
2020. 07. 28
精神疾患の業務起因性
考察)認定基準から考える事が第一歩であると考えられる。概要)心理的負荷による精神障害の業務起因性に関する認定基準「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は合理的といえる。認定基準を踏まえて、個別具体的な事情を総合的に考慮するのが相当雇用契約上、行為者Bが被行為者原告Xに対し優鉄的な立場にあったということは、Xの心理的負荷を強める要素として評価すべき会社に相談しても適切な対応がない改善されなかったまたは会社への相談などの後に職場の人間関係が悪化した場合に該当全証拠によっても、これを左右する事実関係は認められない。Xの精神障害発病につき業務起因性を認めることができる。療養補償給付及び休業補償給付を支給しないこととした本件各処分は違法であって、取り消しを免れない
2020. 07. 28
企業側の安全配慮義務違反の前提となる予見義務の必要性
考察)訴訟上の因果関係の立証と使用者の予見義務の内容について、どこまでの事をすれば良いのかを示している判例であると思われる。概要)訴訟上の因果関係の立証は、経験則に照らして全証拠を総合して検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る程度の高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とする。使用者が認識すべき予見義務の内容は、生命、健康という被害法益の重大性に鑑みると、安全性に疑念を抱かせる抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足りる必ずしも生命・健康に対する障害の性質、程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない。Y社は石綿ないしタルクが、人の生命・健康に重大な障害を与える危険性があると認識することができた。かつ、認識すべきであったとして、安全配慮義務違反の前提となる予見可能性があった。粉塵作業従事者の生命・健康に重大な障害が生じることを防止する義務を負っていた。Y社が積極的に、Xらの権利行使を妨げたなどの事情は認められないものの、Y社の看過できない帰責事由により、Xらの権利行使や時効中断行為が事実上困難になったと言うべきY社の消滅時効の援用(時効の援用を時効の効力は発生しない。)は権利濫用として許されないもの
2020. 07. 08
疾病死亡と石綿ばく露の因果関係
亡Aの疾病と石綿ばく露の因果関係について肺癌の発症リスクを2倍以上に高める石綿ばく露があった場合に肺癌発症を石綿に起因するものとみなし、発症リスクが2倍になる累積暴露量とみなす平成24年基準を優に満たしている勤務に起因することが高度の蓋然性を持って証明されたというべきであるY社は、高濃度のタルク粉塵の飛散、タルクへの石綿の混在、石綿の生命・健康への危険性の全てを知悉(細かいところまで知り尽くす意味)していたYは具体的に生命・健康への危険性を予見していたとも認められる。
2020. 07. 05
比較的長期に及ぶ期間雇用者の雇止めの相当性
考察)契約更新については、客観的にみても問題ないかとは思えるが、今後については5年以降の無期雇用転換などを考慮すると、この判例は変わる可能性があると思われる。概要)Xの雇用契約について、再任限度回数(4回)を超える合計6度の更新雇用継続期間も約7年3ヶ月という比較的長期に及んでいたXの雇用は臨時的なものとはいえないXは本件雇用契約が翌年度以降も同様に更新されることについて合理的な期待を抱いていたといい得る本件要望書の通り翌々年度以降は雇用契約が更新されないことを十分理解した合理的な期待を有していたものとはいえない大学の教員の雇用については、一般に流動性のある事が想定されている助教の職位の性質ないし位置づけY法人における実情Xについてさらなる雇用継続を行わないこととして雇止めに至る客観的にみても、十分な合理性及び社会通念上の相当性があるというべきY法人による違法な権利侵害であると評価することはできない。Y法人は、雇用契約の更新を申し入れたが、これに応じることなく平成28年3月31日が経過した。
2020. 07. 05
比較的長期に及ぶ期間雇用者の雇止めの相当性
考察)契約更新については、客観的にみても問題ないかとは思えるが、今後については5年以降の無期雇用転換などを考慮すると、この判例は変わる可能性があると思われる。概要)Xの雇用契約について、再任限度回数(4回)を超える合計6度の更新雇用継続期間も約7年3ヶ月という比較的長期に及んでいたXの雇用は臨時的なものとはいえないXは本件雇用契約が翌年度以降も同様に更新されることについて合理的な期待を抱いていたといい得る本件要望書の通り翌々年度以降は雇用契約が更新されないことを十分理解した合理的な期待を有していたものとはいえない大学の教員の雇用については、一般に流動性のある事が想定されている助教の職位の性質ないし位置づけY法人における実情Xについてさらなる雇用継続を行わないこととして雇止めに至る客観的にみても、十分な合理性及び社会通念上の相当性があるというべきY法人による違法な権利侵害であると評価することはできない。Y法人は、雇用契約の更新を申し入れたが、これに応じることなく平成28年3月31日が経過した。
2020. 07. 04
残業代を歩合給から控除する計算方法の相当性
考察)残業については、固定残業という考え方もあるが、今回の時間外労働などを抑制し、労働者への補償を行うという趣旨に基づくと、これからは残業代を支給しないような考え方をするのは難しいと思われる。概要)労働基準法37条同条などに定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるもの同条などに定められた方法以外の方法により算定された手当を支払うこと自体が直ちに同条に反するものではない37条に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討する前提として、通常の労働時間の賃金にあたる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができる事が必要歩合給の計算にあたり、残業手当などに相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当などの支払いにより割増賃金が支払われたとはいえない。労基法37条が割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働などを抑制し、同法の規定を遵守させる。労働者への補償を行おうとする趣旨によるものである当該手当が時間外労働などに対する対価として支払われるものとされている事を要する。当該手当の名称や算定方法だけでなく、労基法37条の趣旨を踏まえ、当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置づけなどにも留意して検討しなければならない。本件においては、通常の労働時間の賃金にあたる部分と労基法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
2020. 07. 04
問題行為を起こす従業員に対する配置転換、解雇に対する有効性
考察)従業員の問題行為について、業務内容などを変更することについては、問題はないように思われる。また、それに対して繰り返すようであれば、解雇もやむを得ないと思われる。ただ、賃金の減額については、賃金規定などで職務による賃金の変化くらいは最低限示していないと難しいように思われる。ここでは、そこまで話は出ていない。概要)会社内部における企画・運営について、自己の意見・不満を外部にぶちまけるかの内容のメールを送信したXに対し、直ちに従前の担当を停止難易度が著しく低い単純作業を担当させる業務指示につき、問題行為の性質上、従前の担当業務を担当させられない場合業務軽減の必要性のない他の従業員の担当業務の一部を担当させたその一事をもって懲罰目的であるとか、パワハラに該当するとかいうには無理がある十分な反省と改善がみられるまで外部との接触のない業務を行わせることは、やむを得ない措置である。反省文に自己の意見、不満をにじませた記載があるXを従前業務に復帰させなかったことは、やむを得ないXを退職に追い込む目的で発せられたことを認めるに足りる証拠はないYは直ちに性急に踏み切ったものでもない反省と改善の機会を十分に与えられていた2度の懲戒処分後も自省的な反省と改善がみられない上司や元上司などに対する他罰的言動を繰り返す本件解雇は有効
2020. 07. 03
組合員であることの不法行為の該当性
考察)基本的には、他との比較が重要になると思われる。概要)定年再雇用にあたって不利益な取り扱いを受けるとすれば、組合員の組合活動意思が萎縮し、組合活動一般に対して制約的効果が及ぶ組合員を減少させ、組織の弱体化を意図したもの再雇用条件、残業禁止指示、賞与減額支給は組合に対する支配介入にあたる。
2020. 07. 03
就業規則と異なる契約の有効性
考察)就業規則で設定している限り、それを下回る契約は設定できない。概要)前使用者とY社間で事業譲渡があったからといって、当然に従前の雇用契約が承継されるものではない。承継について特別の合意がされているか否かで判断する。YとXの合意によって有期雇用期間が設定されているかどうかを検討就業規則において正職員は無期契約であることが前提とされている。当該就業規則が事前に交付されている事などから、有期雇用期間の設定を否定Xが前使用者との雇用関係に基づいて2年以上勤務前使用者とYが実質的に同一の事業者であると認められる。適格性を判断するための情報は十分に把握していたもの使用期間の定めの適用を否定
2020. 06. 28
障害を持つ労働者のうつ病に対する業務起因性
考察)障害者であるからといって、業務との因果関係を判断する際に、同種の労働者として障害者を基準に検討するべきではないと判断している事は参考になる。元々障害者であることを条件として雇用されている場合には、この限りでないこともある。概要)保険給付の対象となる「業務上死亡した場合」に当たるためには、相当因果関係があることが必要死亡が業務に内在する危険性が実現したものと認められる必要がある。被災労働者と同種の平均的労働者当該労働者と職種、職場における立場、経験などの社会通念上合理的な属性と認められる諸要素の点で同種の者を基準として検討業務上の自由に当たるか否かの判断において出来事を客観的に把握すべきである以上、障害者の保護の必要性を加味すべく、被災労働者である障害者を基準として心理的負荷の強弱を評価することは相当ではない。労働者の有する障害の存在が雇用する際の前提とされ、障害のゆえに所用の労務軽減がされているような場合、障害の故に労務軽減が必要とされていることを年齢、経験などに準ずる属性として考慮することが適切と考えられる。しかし、障害を知り、知り得たとしても、事業主の認識が無過失責任に立脚する労災保険制度上の給付の有無を左右することになるとは解することができない。すでに発症している精神障害が悪化した場合に、悪化の業務起因性の判断において、特別な出来事の存在を要するとすることには合理性がある。結論として、軽症うつ病エピソードを発症したことのいずれについても業務起因性を否定している。
2020. 06. 28
懲戒処分に対する業務改善が見られない社員の解雇の有効性
考察)問題は即座に解雇ではなく、順を追って対応することが重要である。反省文は有効な手段として用いることが出来そうです。概要)会社内部における企画・運営についての自己の意見・不満を外部にぶちまけるかの内容のメールを送付したX直ちに従前の担当を停止し、難易度が著しく低い単純作業を担当させる業務指示問題行為の性質上、従前の担当業務を担当させない場合業務軽減の必要性のない他の従業員の担当業務の一部を担当させたとしても、その一事をもって懲罰目的であるとか、パワハラに該当するとかいうには無理がある。Xに組織の基本を体得させるという業務上の必要性十分な反省と改善が見られるまで外部との接触のない業務を行わせる。やむを得ない措置である。問題行為を起こしたXが提出した反省文に、意見・不満をにじませた記載Yが今後も職場規律を乱す言動を行いかねないという大きなリスクを抱えた人材であると評価従前業務に復帰させなかったことは、誠にやむを得ない。退職に追い込む目的で発せられたことを認めるに足りる証拠はない。メール行為にたいし、直ちに性急に解雇に踏み切ったものではない。反省と改善の機会を十分に与えられていたにもかかわらず、2度の懲戒処分後も反省と改善が見られない。他罰的言動を繰り返した。解雇は有効
2020. 05. 29
正社員とアルバイトの労働条件の相違に対する有効性
考察)労契法20条において、労働条件相違に対する条文がある中、同一労働同一賃金の対策にも重要になる賞与や休暇についても在籍期間だけでなく、他に支給の対価を作成しないと、額の多寡はあるにせよ、全く支払わないという判断はできないことが分かる。概要)労働契約法20条①職務の内容②当該職務の内容及び配置の変更の範囲③その他の事情(職務の内容など)その相違が不合理と認められるものであってはならない。認められるものであるか否かを判断する際には、これらの関連する事情に限定されるものではない。当該相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については、当該相違が同条に違反することを主張するものが、当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については、当該相違が同条に違反することを争うものが、それぞれ主張立証責任を負うものと解される。賞与正社員として賞与算定期間に在籍し就労していたことそれ自体に対する対価としての性質を有する。アルバイトに対し、額の多寡はあるにせよ、全く支給しないとすることには不合理というしかない。正社員と比較し、賞与の支給基準の60%を下回る支給しかしない場合は不合理な相違に至るものというべき年間と通して、フルタイムで勤務しているアルバイト職員に対し、夏期特別有給休暇を付与しないことは不合理である。私傷病による欠勤中の賃金支給を一切行わないこと、休職給の支給を一切行わないことは不合理
2020. 05. 17
新聞記者への情報提供による懲戒処分の有効性
考察)情報提供について、懲戒処分とする場合に、不法行為が成立しない内容が含まれているが、この場合、懲戒処分を規則に則り対応し、訴えにより覆される場合には、その指示に基づいて取り消すくらいに考えないと、事業活動的には懲戒処分の対応が難しいように思われる。概要)新聞記者に対し誤った情報を提供して報道Y社の信用を著しく毀損したとしてXに対する懲戒処分を有効とした判決を取り消された。民事上の不法行為である名誉毀損については、①その行為が今日今日の利害に関する事実にかかり②公益を図る目的である場合③摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は違法性がなく、不法行為は成立しない。
2020. 05. 17
支給額増加の不利益変更の有効性
考察)不利益変更に関して従前と支給額がどのように変わるのか?今回であれば、残業見合いが含まれていても、その分賃金が増している。日給が時給に変更されているが、もともと短時間の従業員であれば、減額が見られるが、通常勤務の従業員であれば、問題がないなど概要)Y社によって作成または変更された就業規則はXらを拘束しないと主張平成25年10月分から27年9月分までの時間外、休日、深夜労働の割増賃金26年10月分から27年9月分までの未払い賃金などの支払い25年10月分から27年4月分までの時間外労働などの割増賃金26年10月分から27年4月分までの未払い賃金などの支払いを求めた。平成20年1月に添乗員就業規則を制定4時間分の時間外勤務手当見合い分を含む平成26年就業規則日当制から時給制にする形で変更平成26年9月中旬以降、方面ごとの1時間の時給額を記載平成20年就業規則の不利益変更該当制及び、不利益の程度について8時間の所定労働時間に対する対価であった日当につき、4時間の時間外労働時間分が含まれることとなったものであって形式的には不利益変更といえるものしかし、従前の日当を11で除して12を乗じたものとしていることから、結果的に10.6%の賃金増額となっている。実質的な不利益性としては大きくない実態に沿う形で規定が整備されたと見ることができる
2020. 05. 16