契約社員と正社員との間における皆勤手当支給の有無
考察)皆勤手当について、契約社員であることを理由として支給をしないことは、どのような形であっても難しいように思われる。概要)契約社員と正社員との間で、能力の開発と人材の育成、活用に市することを目的とする等級・役職制度の有無配転および出向の可能性などの点で相違があるこれらの相違は、皆勤手当の趣旨とは合理的な関連性がない時給の増減について、契約社員である乗務員について、皆勤を奨励する趣旨で翌年の時給の増額がなされ得る部分があることを持って、皆勤手当を不支給とする合理的な代償措置と位置付けることはできない。皆勤手当の不支給について、労働契約法20条のいう不合理と認められるものに当たり、均衡待遇を要するXの法的な利益を侵害するものとして不法行為になり得る労働契約法20条 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。皆勤手当を支給しないという違法な取り扱いをしたことについて過失があったというべきである。
2020. 08. 14
分限免職処分における回避努力の有効性
考察)基本的には国家公務員法においても解雇についての考え方は一緒であると考えられます。概要)国家公務員法78条4号に基づく分限免職処分は、被処分者になんらの責められるべき 事由がないにもかかわらず、その意に反して免職という重大な不利益を課す処分(本人の意に反する降任及び免職の場合)第七十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合四 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合機構への採用他省庁への転任または他の組織への就職の機会の提供などの措置をとるなど分限免職処分回避に向けた努力をすべき義務を負う。本件においては、社保庁をその外局に持ち社保庁長官の任命権を有していた厚労大臣も、分限免職処分回避努力義務を負う。その上で、社保庁長官などおよび厚労大臣共に分限免職処分を回避するために様々な措置を講じていた。懲戒処分歴のある両名に対して分限免職処分回避努力義務違反はなかった。
2020. 08. 14
実績のある企業における定年再雇用拒否と反対給付を受ける権利の有効性
考察)定年再雇用については、今後もトラブルが絶えない気がしますが、再雇用の実績が大きく、例え再雇用拒否後に他の企業で勤務していたとしても、支払いを無効とすることはできないことが大きい。概要)労働組合との労働者供給契約会社が供給も申し込みをした供給労働者と会社との間で雇用契約が締結されていることを当然の前提としている。労働者と会社との契約関係に労働契約法及び、労基法の適用を否定すべき理由はない。無期雇用契約が定年により終了した場合であっても、労働者から申し込みがあれば、再雇用契約を締結することが就業規則などで明定され、確立した慣行となっていて、契約内容が特定されている場合、再雇用契約を締結せず、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、権利濫用に該当する。現に75歳まで再雇用された実績の存在を照らすと、倦怠、健康状態などに問題がない限り75歳まで契約更新が可能という限度で、有期雇用契約が更新されることについての合理的な理由があると認めるのが相当75歳まで有期雇用契約が更新されると期待することについての合理的な理由が認められる以上、一度再雇用としての有期雇用契約を締結した以上、契約更新への期待はすでに現実化している。乗務中の交通事故および交通違反について行政処分を受けていないこと態様が悪質とはいえないことその後に契約を更新された事実があることこれらを考慮すると、雇止めの客観的合理的理由は認められない。雇止め後に他社で得た収入については、民法536条2項「債権者の責めに帰すべき事 由によって債務を履行することができなくなったとき は、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。」に基づき使用者に償還(債務を返済する)すべき控除額の上限については、労基法26条『使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない』の趣旨に鑑み、平均賃金の4割を限度とすべき
2020. 08. 14
契約社員と正社員の各手当の支給の有無と相違の有効性
考察)契約社員と正社員との差異については、基本的な解釈の形はあるが、内容によって異なること、主張立証責任は主張するものが負うことを認識しておいた方が良いと思われる。概要)労働契約法20条労働条件の相違が①労働者の業務の内容②当該業務に伴う責任の程度③当該職務の内容④配置の変更の範囲⑤その他の事情不合理と認めら得ると主張する無期契約労働者において特定して主張すべきもの規範的要件:具体的に特定されていない概念が法律の要件とされている場合に、これを規範的要件といいます。明確にできないこと労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的評価を伴うものであるから、当該相違が労働契約法20条に違反すると主張するものが主張立証責任を負う。正社員と契約社員との労働条件の相違のうち、住宅手当住宅手当は、従業員が実際に住宅費を負担しているか否かを問わずに支給される。職務内容などを離れて福利厚生及び生活保障の趣旨でされるされるもの生活費補助の必要性は職務の内容などによって差異が生ずるものではない正社員であっても転居を必然的に伴う配置転換は想定されていない。褒賞及び早出残業手当に関する相違褒賞は一定期間勤続した従業員に対して支給している。褒賞にかかる労働条件の相違は、不合理であると評価することができる。早出残業手当の割増率についても、割増率に相違を設けるべき理由はなく、割増賃金を支払う場合にも同様というべき労働契約法20条に違反するもの違法な取り扱いをしたことについては過失があったというべきこれらについては、不法行為に基づき損害賠償が命じられた。賠償義務が履行されることにより経済的損失は慰謝されるため、慰謝料請求は棄却。本給正社員と比べて職務内容及び変更範囲に関しては売店業務以外の業務への配置転換の可能性はない。72.6%から74.7%と一概に低いとはいえない。契約社員には、正社員と異なり皆勤手当及び早番手当が支給され、賃金お相違を解消する機会がある。その他の事情として、関連会社再編によって転籍してきたものが一定程度占めており、一方的に切り下げたりすることができない。資格手当各資格に応じて支給されるものであり、同様の資格を設けることは困難であると認められる。賞与にかかる相違違反しない従業員の年間賃金のうち賞与として支払う部分を設けるか、いかなる割合を賞与とするかは使用者にその経営判断に基づく一定の裁量が認められるものというべき本給に述べた経緯から、他の正社員と同一に遇されていることにも理由があることを考慮すれば、直ちに不合理であると評価することはできない。
2020. 08. 11
使用者の注意義務違反と過労死の相当因果関係
考察)基本的に下記の内容を考えると相当因果関係の証明をされるとそれを跳ね返すのは難しく、まずは言われないように対策をとることが重要である。概要)平均月250時間程度の時間外労働に従事過重な勤務状態を認識しており、業務遂行に伴う疲労が過度に蓄積する状況になることを容易に想定することができた。負担軽減措置を一切講じなかった体調不良を訴えていたのにほぼ通常と同様の業務に従事させていた注意義務違反に当たる。相当因果関係は通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる業務以外の個体因子などが関与する可能性が考えられるとしても、その因子が何らかの疾患や極めて稀な得意体質にあたるようなものとは認められないときは、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されている相当因果関係を否定することはできない。
2020. 07. 28
精神疾患の業務起因性
考察)認定基準から考える事が第一歩であると考えられる。概要)心理的負荷による精神障害の業務起因性に関する認定基準「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は合理的といえる。認定基準を踏まえて、個別具体的な事情を総合的に考慮するのが相当雇用契約上、行為者Bが被行為者原告Xに対し優鉄的な立場にあったということは、Xの心理的負荷を強める要素として評価すべき会社に相談しても適切な対応がない改善されなかったまたは会社への相談などの後に職場の人間関係が悪化した場合に該当全証拠によっても、これを左右する事実関係は認められない。Xの精神障害発病につき業務起因性を認めることができる。療養補償給付及び休業補償給付を支給しないこととした本件各処分は違法であって、取り消しを免れない
2020. 07. 28
企業側の安全配慮義務違反の前提となる予見義務の必要性
考察)訴訟上の因果関係の立証と使用者の予見義務の内容について、どこまでの事をすれば良いのかを示している判例であると思われる。概要)訴訟上の因果関係の立証は、経験則に照らして全証拠を総合して検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る程度の高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とする。使用者が認識すべき予見義務の内容は、生命、健康という被害法益の重大性に鑑みると、安全性に疑念を抱かせる抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足りる必ずしも生命・健康に対する障害の性質、程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない。Y社は石綿ないしタルクが、人の生命・健康に重大な障害を与える危険性があると認識することができた。かつ、認識すべきであったとして、安全配慮義務違反の前提となる予見可能性があった。粉塵作業従事者の生命・健康に重大な障害が生じることを防止する義務を負っていた。Y社が積極的に、Xらの権利行使を妨げたなどの事情は認められないものの、Y社の看過できない帰責事由により、Xらの権利行使や時効中断行為が事実上困難になったと言うべきY社の消滅時効の援用(時効の援用を時効の効力は発生しない。)は権利濫用として許されないもの
2020. 07. 08
疾病死亡と石綿ばく露の因果関係
亡Aの疾病と石綿ばく露の因果関係について肺癌の発症リスクを2倍以上に高める石綿ばく露があった場合に肺癌発症を石綿に起因するものとみなし、発症リスクが2倍になる累積暴露量とみなす平成24年基準を優に満たしている勤務に起因することが高度の蓋然性を持って証明されたというべきであるY社は、高濃度のタルク粉塵の飛散、タルクへの石綿の混在、石綿の生命・健康への危険性の全てを知悉(細かいところまで知り尽くす意味)していたYは具体的に生命・健康への危険性を予見していたとも認められる。
2020. 07. 05
比較的長期に及ぶ期間雇用者の雇止めの相当性
考察)契約更新については、客観的にみても問題ないかとは思えるが、今後については5年以降の無期雇用転換などを考慮すると、この判例は変わる可能性があると思われる。概要)Xの雇用契約について、再任限度回数(4回)を超える合計6度の更新雇用継続期間も約7年3ヶ月という比較的長期に及んでいたXの雇用は臨時的なものとはいえないXは本件雇用契約が翌年度以降も同様に更新されることについて合理的な期待を抱いていたといい得る本件要望書の通り翌々年度以降は雇用契約が更新されないことを十分理解した合理的な期待を有していたものとはいえない大学の教員の雇用については、一般に流動性のある事が想定されている助教の職位の性質ないし位置づけY法人における実情Xについてさらなる雇用継続を行わないこととして雇止めに至る客観的にみても、十分な合理性及び社会通念上の相当性があるというべきY法人による違法な権利侵害であると評価することはできない。Y法人は、雇用契約の更新を申し入れたが、これに応じることなく平成28年3月31日が経過した。
2020. 07. 05
比較的長期に及ぶ期間雇用者の雇止めの相当性
考察)契約更新については、客観的にみても問題ないかとは思えるが、今後については5年以降の無期雇用転換などを考慮すると、この判例は変わる可能性があると思われる。概要)Xの雇用契約について、再任限度回数(4回)を超える合計6度の更新雇用継続期間も約7年3ヶ月という比較的長期に及んでいたXの雇用は臨時的なものとはいえないXは本件雇用契約が翌年度以降も同様に更新されることについて合理的な期待を抱いていたといい得る本件要望書の通り翌々年度以降は雇用契約が更新されないことを十分理解した合理的な期待を有していたものとはいえない大学の教員の雇用については、一般に流動性のある事が想定されている助教の職位の性質ないし位置づけY法人における実情Xについてさらなる雇用継続を行わないこととして雇止めに至る客観的にみても、十分な合理性及び社会通念上の相当性があるというべきY法人による違法な権利侵害であると評価することはできない。Y法人は、雇用契約の更新を申し入れたが、これに応じることなく平成28年3月31日が経過した。
2020. 07. 04
残業代を歩合給から控除する計算方法の相当性
考察)残業については、固定残業という考え方もあるが、今回の時間外労働などを抑制し、労働者への補償を行うという趣旨に基づくと、これからは残業代を支給しないような考え方をするのは難しいと思われる。概要)労働基準法37条同条などに定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるもの同条などに定められた方法以外の方法により算定された手当を支払うこと自体が直ちに同条に反するものではない37条に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討する前提として、通常の労働時間の賃金にあたる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができる事が必要歩合給の計算にあたり、残業手当などに相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当などの支払いにより割増賃金が支払われたとはいえない。労基法37条が割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働などを抑制し、同法の規定を遵守させる。労働者への補償を行おうとする趣旨によるものである当該手当が時間外労働などに対する対価として支払われるものとされている事を要する。当該手当の名称や算定方法だけでなく、労基法37条の趣旨を踏まえ、当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置づけなどにも留意して検討しなければならない。本件においては、通常の労働時間の賃金にあたる部分と労基法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
2020. 07. 04
問題行為を起こす従業員に対する配置転換、解雇に対する有効性
考察)従業員の問題行為について、業務内容などを変更することについては、問題はないように思われる。また、それに対して繰り返すようであれば、解雇もやむを得ないと思われる。ただ、賃金の減額については、賃金規定などで職務による賃金の変化くらいは最低限示していないと難しいように思われる。ここでは、そこまで話は出ていない。概要)会社内部における企画・運営について、自己の意見・不満を外部にぶちまけるかの内容のメールを送信したXに対し、直ちに従前の担当を停止難易度が著しく低い単純作業を担当させる業務指示につき、問題行為の性質上、従前の担当業務を担当させられない場合業務軽減の必要性のない他の従業員の担当業務の一部を担当させたその一事をもって懲罰目的であるとか、パワハラに該当するとかいうには無理がある十分な反省と改善がみられるまで外部との接触のない業務を行わせることは、やむを得ない措置である。反省文に自己の意見、不満をにじませた記載があるXを従前業務に復帰させなかったことは、やむを得ないXを退職に追い込む目的で発せられたことを認めるに足りる証拠はないYは直ちに性急に踏み切ったものでもない反省と改善の機会を十分に与えられていた2度の懲戒処分後も自省的な反省と改善がみられない上司や元上司などに対する他罰的言動を繰り返す本件解雇は有効
2020. 07. 03
組合員であることの不法行為の該当性
考察)基本的には、他との比較が重要になると思われる。概要)定年再雇用にあたって不利益な取り扱いを受けるとすれば、組合員の組合活動意思が萎縮し、組合活動一般に対して制約的効果が及ぶ組合員を減少させ、組織の弱体化を意図したもの再雇用条件、残業禁止指示、賞与減額支給は組合に対する支配介入にあたる。
2020. 07. 03
就業規則と異なる契約の有効性
考察)就業規則で設定している限り、それを下回る契約は設定できない。概要)前使用者とY社間で事業譲渡があったからといって、当然に従前の雇用契約が承継されるものではない。承継について特別の合意がされているか否かで判断する。YとXの合意によって有期雇用期間が設定されているかどうかを検討就業規則において正職員は無期契約であることが前提とされている。当該就業規則が事前に交付されている事などから、有期雇用期間の設定を否定Xが前使用者との雇用関係に基づいて2年以上勤務前使用者とYが実質的に同一の事業者であると認められる。適格性を判断するための情報は十分に把握していたもの使用期間の定めの適用を否定
2020. 06. 28
障害を持つ労働者のうつ病に対する業務起因性
考察)障害者であるからといって、業務との因果関係を判断する際に、同種の労働者として障害者を基準に検討するべきではないと判断している事は参考になる。元々障害者であることを条件として雇用されている場合には、この限りでないこともある。概要)保険給付の対象となる「業務上死亡した場合」に当たるためには、相当因果関係があることが必要死亡が業務に内在する危険性が実現したものと認められる必要がある。被災労働者と同種の平均的労働者当該労働者と職種、職場における立場、経験などの社会通念上合理的な属性と認められる諸要素の点で同種の者を基準として検討業務上の自由に当たるか否かの判断において出来事を客観的に把握すべきである以上、障害者の保護の必要性を加味すべく、被災労働者である障害者を基準として心理的負荷の強弱を評価することは相当ではない。労働者の有する障害の存在が雇用する際の前提とされ、障害のゆえに所用の労務軽減がされているような場合、障害の故に労務軽減が必要とされていることを年齢、経験などに準ずる属性として考慮することが適切と考えられる。しかし、障害を知り、知り得たとしても、事業主の認識が無過失責任に立脚する労災保険制度上の給付の有無を左右することになるとは解することができない。すでに発症している精神障害が悪化した場合に、悪化の業務起因性の判断において、特別な出来事の存在を要するとすることには合理性がある。結論として、軽症うつ病エピソードを発症したことのいずれについても業務起因性を否定している。
2020. 06. 28